紀平梨花ファイナルでロシアを崩せず4位に終わる
女子グランプリファイナルが、イタリアのトリノで12月6日開催された.
新たな時代を迎えた女子グランプリフで紀平梨花選手が果敢にロシアに挑戦した。
結果は、4位とロシアの壁を崩せなかったが、ショート6位からフリーで4位へと巻き返した。
グランプリファイナル1位から3位までの表彰台は、すべてロシア選手が独占するという
ロシア王国の歴史が刻まれることになった。
ショートは出遅れの6位からスタート
紀平梨花 Rika KIHIRA SP GPF 2019.12.5 グランプリファイナル
紀平梨花選手は、完璧な演技を意識しすぎたのか、冒頭のトリプルアクセルで
重心が後傾し、着地が乱れた。なんとか、転倒はこらえたが、次の3回転と3回転トォループの
連続ジャンプで思いもよらない転倒。いつもの紀平選手では、あり得ないミスだった。
結果は、総合点70.71点で、最下位の6位発進だった。
じつは、今回のファイナルでは、紀平梨花選手は調整が失敗していた。
試合後のインタビューでは、つぎのように語っている。
「すごい時間があいていて、復習していて色々と考えていると緊張した。
ぐっすり寝られたというより、目をつぶっていただけ」
日本からイタリアへ移動し、時差ぼけが身体の変調をもたらしていたのかもしれない。
さらに、いつものスケジュールどおりではなく、公式練習後試合まで
9時間以上空いたことも調整がうまくいかなかった原因と考えられた。
トップは、85.45点のアリョーナ・コストルナヤだったが、14.74点と大きな差が生まれてしまった。
ショートプログラム結果
- アリョーナ・コストルナヤ 85.45
- アリーナ・ザキトワ 79.60
- アンナ・シェルバコワ 78.27
- ブレイディ・テネル 72.20
- アレクサンドラ・トゥルソワ 71.45
- 紀平梨花 70.71
フリーで巻き返しを図った紀平選手だったが
フリーでは、冒頭から巻き返しの勝負に出たが、残念ながら、
4回転サルコーは,重心が崩れて転倒となってしまった。
それでも、2本トリプルアクセルを成功させるなどほとんどミスのない形で
演技を終了した。終了直後に高々とこぶしを挙げたので、自分自身は
出来るだけのことはやったと思ったに違いない。
結果は、フリー145.6点で、合計216.47点の4位に終わった。
それにしても、完璧な演技ではなかったが、これで、4位とは驚きだった。
いかに、ロシアの3人娘がハイレベルだったことが窺われる結果だった。
この1年で、女子ファイナルは劇的に変化してしまったのだ。
女子ファイナルグランプリ結果
- アリョーナ・コストルナヤ247.59
- アンナ・シェルバコワ 240.92
- アレクサンドラ・トルソワ233.18
- 紀平梨花 216.47
- ブレイディ・テネル 212.18
- アリーナ・ザキトワ 205.23
ロシア王国を切り崩すにはスピードとジャンプの工夫が必要
女子ファイナルが男子並みの演技構成に変化したことと
ロシアが新たな時代を形成することを告げるような試合だった。
4回転は、2位のシェルバコワは3本着氷、3位のトルソワは5本中3本成功。
とくに、トルソワの4回転ルッツは羽生選手を見ているようで、完璧だった。
そんなロシア勢を見てもたじろかないのが、紀平梨花選手だ。
「いい刺激だけをもらっていて、自分は自分のことをしっかりやろうと思っている」
「4回転が必須になってくる試合っていうのを改めて感じさせられた。
SP、フリーをずっとそろえて、完璧を目指せるように。
これからは守りに入らずに、攻めた試合を続けていきたい」
決して、弱気にならないところが紀平選手の強みでもある。
一方、メンタル面が大切であることはもちろんだが、やはり、技術の面で
より一層の飛躍が求められているのも事実なのだ。
今回の紀平選手のトリプルアクセルのデータはつぎのようになっている。
- 高さ 39cm
- 距離 1.92m
- 着地スピード 14.4km/h
このデータから、理論計算上だが、つぎのような結果が出てくる。
- 跳ぶ直前のスピード:15.78km/h
- 跳ぶ角度 :39.09度
- 滞空時間 : 0.56秒
優勝したアリョーナ・コストルナヤ選手のトリプルアクセルのデータは
- 高さ: 57cm
- 距離: 2.56m
- 着地スピード: 16.8km/h
この条件だと理論計算上つぎのようになる。
- 跳ぶ直前のスピード: 18.1km/h
- 跳ぶ角度 : 41.7度
- 滞空時間 : 0.68秒
ここで、注目したいのは、コストルナヤ選手と比較したときの
スピードである。紀平選手の15.78km/hと比べて明らかに速い。
もちろん、角度も重要だが、滞空時間の差が0.12秒も違うことは
演技の面で本当に大きいのである。
コストルナヤ選手は、理想的な3Aジャンプを習得していると言えるが、
じつは、紀平選手もベスト体調のときにはこれくらいのスピードがあった。
ところが、最近の演技では、スピードが全般に落ちているのだ。
4回転を含める演技構成を確かなものにするためには、やはり基本の
スピードアップと安定感が必要だと言わざるを得ない。
それから、もうひとつ重要な点は、回転の工夫だ。
今回の羽生選手とネイサン・チェン選手との大きな違いは、
ジャンプしているときの腕の置き方の点である。
4回転を安定させるためには、いかに早く回転するのかが重要だが、
腕を合わせるのではなくて、交差させたほうがより早く回転することができる。
女子も男子並みの技術を習得するためには、男子の技術の
いいところを取り入れることも重要だ。
ケガをしないように、新たな挑戦に向かってほしい。
ガンバレ!紀平梨花!