紀平梨花のトリプルアクセル失敗の原因とは?世界選手権2019より
3月20日、埼玉スーパーアリーナで開催された世界選手権。
紀平梨花は大きな期待を浴びながら女子ショートプログラムに挑んだ。
しかし、冒頭のトリプルアクセルに失敗し、7位と出遅れた。
首位のザギトワ選手から、11.18点も差がついてしまった。
3Aの失敗直後に観客から大きなため息が漏れた。
わたしも、テレビの前で同じようにため息が、、、、。
でも、その失敗直後に観客から拍手が起きるのである!
そう、ガンバッテという拍手である。
紀平梨花は、日本人のファンから愛されているのだ。
話がずれてしまいましたが、トリプルアクセルが、
0点のシングルアクセルになってしまったことは、やはり大きいのです。
成功していれば、ザギトワに勝っていた可能性があります。
なんとかフリーで挽回して表彰台へ上ってほしいですが、
ここでは、3Aの失敗の原因と今後必要な対策について考えてみたいと思います。
トリプルアクセル失敗の原因を探る
3Aジャンプをする直前(失敗に終わる)
これは、世界選手権のショートプログラムでトリプルアクセルを跳ぶ直前のシーンです。
力学的に垂直に跳ぶ力(上昇する力)が減弱してしまいます。
しかも、荷重方向と靴のエッジ方向にずれが生じています。
次に紹介するシーンは、トリプルアクセルが成功したときのものです。
3Aジャンプをする直前(成功です)
いかがですか?しっかりと体重がエッジまで届いているのがわかります。
まったく同じシーンではありませんので、完全な比較はできませんが、
エッジは,失敗のときより少し垂直よりになっています。40度~45度くらいでしょうか?
この角度が成功への大きなカギを握っているように思えてなりません。
紀平梨花選手は、試合後「スピードが足りなかった。」とコメントしていましたが、
ジャンプ直前の入るイメージのずれつまり角度のずれも感じていたはずです。
グランプリファイナルでなんとか成功したトリプルアクセルは?
3Aジャンプをする直前(成功です)
上の写真は、グランプリファイナルでのショートプログラムでトリプルアクセルが、
成功したシーンです。よれよれの靴でなんとか修正しようとしている姿がわかります。
スケート靴のエッジの方向と体重の荷重方向が一致していません。
このエッジの角度ではトリプルアクセルは跳べません。
跳ぼうとしています。
矢印のあたりをよーく見るとすきまが見えないでしょうか?
このすきまのおかげで、紀平選手は瞬間的に修正してきます。
テープを巻きすぎて固定してしまうとこの修正が出来なくなります。
トリプルアクセルを成功させるスピードと角度とは?
出典:keisan (カシオの計算サイト)
ここからは、少しマニアックになるかもしれませんが、聞いてください。
高難度のトリプルアクセルを成功させるためには、
どうしても空中にいる時間をふやす必要があります。(滞空時間)
そして、なるべく高く遠くへ飛ぶためには、スピードと角度が重要になってきます。
もちろん、そこに3回転半の体幹とか、空気抵抗も考えないといけませんが、
ここでは、シンプルにそのスピードと角度の基本を見つめてみます。
最近の技術進歩のおかげで飛距離・高さ・着氷速度がわかるようになってきました。
データを利用してそのスピードと角度を考察してみます。
(エッジの角度ではありません)
公式練習時のデータ(トリプルアクセル成功)
- 飛距離:2.72メートル
- 高 さ :0.54メートル
- 着氷速度:16.2キロ/時間
このデータを用いて、空気抵抗がなく、回転もない条件だと
つぎのような計算結果になります。(靴が重心となります)
となりました。
時速18.8km/h、角度約38度で前方に跳んで3回転半ですが、スゴイですね。
世界で勝つためには科学に基づく高度な技術が必要だ
ピョンチャンオリンピックで見事に金メダルを獲得した女子団体パシュートの
高木菜那選手、高木美帆選手、佐藤綾乃選手です。
彼女らは、もちろん素晴らしい選手なんですが、金メダルを獲得できたのは、
じつは、ヨハン・デ・ヴィットコーチのおかげなんです。
彼は、オランダの高度な科学に基づいたトレーニングと科学的な分析で
最高の技術を構築し、世界一速い女子チームを4年で作りあげました。
(世界新記録樹立)
ちなみに、彼を日本に引っ張ってこれたのは、橋本聖子さんの大きな尽力によるものです。
日本では、未だに精神論を唱える時代遅れの人が多いですが、世界では通用しません。
心・技・体を否定はしませんが、根性とかの体験とか程度の低い感覚で指導することは
ダメな時代なのです。
もっと高いレベルへもっていくためには、科学的な分析に基づいた技術が必要です。
フィギアスケートの世界も単なる練習と経験の積み重ねでは、
勝てない時代に突入しています。
第一線のコーチを支えるシステムを早急に構築して強い日本選手を育ててほしいのです。
日本の社会では、一流の指導者、リーダーが非常に少なくなってしまいましたが、
せめてスポーツ界だけは、世界に通用する日本人が生まれてほしいと切に望みます。
最後になりましたが、ガンバレ!紀平梨花!チャンスはまだあります!